第2回 野生サケを尊重しよう

2020年5月22日(金)18:30〜21:00

zoomミーティングシステムを介して開催しました。参加者19人。

話題提供1 森田健太郎さん「サケ野生魚について」

話題提供2 有賀望さん「札幌ワイルドサーモンプロジェクトの取り組み」


話題提供1 森田健太郎さん「サケ野生魚について」

もりた・けんたろうさん 魚類生態学研究者、札幌ワイルドサーモンプロジェクト共同代表


本日、森田の方からは、サケ野生魚について、お話させていただきます。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

内容は、まず、「野生魚とは何か?」から始めさせていただき、次に、サケ増殖の現在について、説明したいと思います。そして、野生魚に対する昨今の社会的状況をご紹介し、野生魚を併用した資源管理について紹介します。そのあとで、過去にさかのぼって、サケ増殖の歴史、野生サケを脅かしてきた要因を概観し、最後に、アイヌ民族のサケ漁のためになるような議論ができればうれしく思います。

まず、野生魚とは?についてですが、現在、我々がサケと呼んでいるものは、二つに分けることができます。一つは、人工ふ化放流魚であり、ヒトが川に遡上した親サケを捕獲し、人工授精を行い、一定の期間飼育したのちに、放流された稚魚に由来するもので、放流魚と区分できます。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

一方、野生魚の方は、人の手を借りずに、サケ自身が本来の姿で自然産卵し、自然の砂利の中で育った卵から生まれたものに由来します。この野生魚ですが、近年、さまざまな点から、注目されていると思います。

まず、混乱を避けるため、言葉の定義、呼び方について、整理したいと思います。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

野生魚は、自然産卵で生まれた個体で、その両親は野生魚か放流魚かは問いません。というか、それは分からないことがほとんどです。

放流魚は、ふ化場から野外に放流された個体で、人工授精に用いた親魚が野生魚か放流魚かは不明です。

また、養殖魚というのもいるのですが、こちらは、出荷されるまで、ずっと養殖場で飼育されている個体で、スーパーで販売されているサーモンや、三陸のギンザケなどが養殖魚になります。

また、さらに、天然魚という区分もあるのですが、このあたりになると、ちょっとややこしくなってきますが、過去に人為的な放流の影響をほとんど受けておらず、遺伝的な固有性を有している個体のことを、特に天然魚と呼ばれることがあります。

なお、研究者によっては異なる定義をする場合もありますし、水産業界でもまた異なる呼び方をする場合もありますので、こういうふうに決まっている、というものではない点については、ご注意ください。

次に、サケ増殖の現在の手法についてですが、現在の日本のサケ資源管理では、再生産は人工ふ化放流で実施することとなっており、自然産卵は考えられていません。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

このイラストは、北海道区水産研究所のキッズページに掲載されている、サケの栽培漁業の模式図ですが、非常に分かりやすく描かれています。沿岸に来遊したサケは、およそ8割~9割が沿岸の定置網漁業によって利用されます。残りの1割ほどのサケは、河川に遡上しますが、河口近くの捕獲場で捕獲されるシステムとなっています。その後、親魚あるいは卵をふ化場までトラックで輸送し、ふ化場で稚魚まで育てて、川に放流されます。この生産システムは、ある意味非常に効率的ですが、サケが産卵場まで到達できないので、サケが自然産卵をすることができない、という問題点があります。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

これは、北海道の河川に設置されたサケの捕獲場の写真です。ウライ(や、上りヤナ)と呼ばれています。サケが遡上する多くの河川では、このように河川捕獲が行われていますので、自然産卵で生まれた野生のサケは、そもそも存在しないのではないか、と考えられてきました。しかし、増水などで、サケが上れることもありますし、捕獲期間外は上ることができるので、自然産卵が0%かというと、必ずしもそうではありません。

近年、野生のサケに関する、多くの情報が得られるようになってきました。それは、耳石温度標識、という技術が普及してきたことが大きな要因です。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

耳石温度標識は、受精卵の時期に、水温を変化させ、耳石という硬組織に、このようなバーコード状の標識を付ける技術です。全ての放流魚に標識を付けることができれば、標識魚は放流魚、無標識魚は野生魚 と判別することができます。

このグラフは、放流魚に標識が付けられている千歳川において、年ごとの河川捕獲数を、野生魚と放流魚に分けて示したものです。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

ごらんのとおり、大部分が放流魚で占められていますが、野生魚も少し存在します。千歳川では、毎年3000万尾の稚魚放流を行うため、人工ふ化放流計画数として、8万尾の親魚捕獲が見込まれており、基本的には放流魚で計画数が達成されています。しかし、2007年から2009年にかけては不漁で、野生魚のおかげで、放流用の種苗を生産することができた、という事実が浮き彫りとなりました。

特に、2008年の不漁時には、野生魚が3割ほど貢献したおかげで、ふ化放流事業が無事に継続されました。

そして、2012年は40万尾を超える豊漁となりました。2012年の野生魚の割合は2%とわずかですが、サケは4年で戻ってくるので、その種卵を供給した2008年は、実は、野生魚のおかげで放流数を維持することができた年です。このようにみると、2012年の豊漁には野生魚も大きく貢献していた、と言えると思います。

とはいえ、総じて、全体的には野生魚は多くありません。しかし、これは、産卵場への遡上ができない状況なので、これが野生魚の潜在的なポテンシャルを意味するわけではないと思います。また、前回の平田さんのご発表にもありましたとおり、計画数よりも多いサケが捕獲される年が多くあります。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

近年、生物多様性保全の観点から、野生サケに対する意識の高まり、社会的状況の変化、というものがあります。例えば、生物多様性国家戦略の中でも、自然産卵のことについて、「天然魚との共存可能な人工種苗放流技術の高度化を図り、河川及びその周辺の生態系にも配慮したさけます増殖事業を推進します。」という文面で記されています。

札幌市が策定した生物多様性さっぽろビジョンのなかでも、「将来的には自然産卵によってサケの回帰が維持されることが理想です。」と記されていますし、この後で有賀さんからご紹介のあるSWSPの設立も、社会的状況の変化と言えるでしょう。

ところで、MSC認証、海のエコラベルというものは、皆さんご存じでしょうか?これは、持続可能な漁業に与えられた水産物認証のことで、このようなラベルが商品に貼られています。このベニザケは先日マックスバリューで買ったものですが、「環境にやさしいMSC認証」「海のエコラベル、持続可能な漁業で得られた水産物」という説明が書かれていました。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

実は、北海道のサケ漁業も、何度かトライされたのですが、取得には至りませんでした。その理由は、野生魚を保全管理していないためでした。

オリンピックで提供される食材には、このようなエコラベルが付いた食材を用いることが慣例であったため、東京オリンピックでは、サケを含めて、日本の水産物がほとんど提供できない恐れがあるということで、一時、話題となりました。右下の毎日新聞の方は、まだWebで読めますので、ご興味がある方はご覧になっていただければと思います。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

次に、では、野生魚をどう保全管理すればよいのか?野生魚を併用した資源管理について、具体的に迫っていきたいと思います。

まず、自然再生産によって、どれ位のサケ資源が作れるのか?現時点で推定されている試算を示しますと、卵から稚魚までの生存率は、人工ふ化の場合は80~90%であるのに対し、自然産卵の場合は10~20%程度にしかなりません。メス1尾あたりの稚魚生産数に換算すると、人工ふ化の場合は2400~2700尾になるのに対し、自然産卵の場合は300~600尾にしかなりません。メス一尾から生産される親魚数を回帰率3%で試算すると、人工ふ化は72~81尾に対し、自然産卵の場合は9~18尾にしかなりません。しかし、それでも、雌サケ1尾が無事に自然産卵できたならば、4年後には9尾以上が漁業の対象になる見積もられます。現在、北海道のふ化場では、メス親魚の使用率は平均で35%程度なので、不要親魚を上手く活用できれば、漁業資源を増加させる効果が期待されます。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

ここで、北海道において、不要親魚を再放流することができた場合の試算をしてみたいと思います。

ふ化放流に必要な親魚数(いわゆる計画数)は約130万尾に対して、実際の捕獲数は近年で200~500万尾となっています。

例えば、捕獲数300万尾の年は、不要親魚が170万尾になり、もし、それらが無事に産卵できたならば、最大で約5億の稚魚となると試算されます。

つまり、潜在的には、放流数1.5倍のポテンシャルがあります。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

近年、サケの回帰率低下が問題となっておりますが、自然産卵を活用することで、資源回復に対して即効性のある対策になるのではないかと考え、多方面で私は意見しています。

これからは、稚魚だけでなく親も放そう、サケマス増殖事業、これを標語にできれば良いんじゃないかな、と思います。

野生魚の存在意義は、この前のスライドまででご紹介したような、量的な側面、つまり、個体数の面の他にも、質的な側面、遺伝子があります。遺伝子の側面は、潜在的にはたいへん重要な要素があると考えられます。自然界では、人工の環境下にない、自然の摂理があります。例えば、自然界では、競争があります。我々ヒトを含めて、多くの動物では、雄と雌で形や体サイズに違いが見られます。雄の方が雌よりも大きい動物が多く、これは雌をめぐる雄同士の競争が関係していると考えられています。左のグラフのように、体サイズと繁殖成功度の関係は、雄の方が傾きが急になると考えられ、その結果、雄の方が体サイズがより大きくなるように進化したと考えられています。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

右側のグラフは、ある河川において、サケの放流魚と、野生魚で、雄と雌で体サイズを比べた結果です。放流魚も野生魚も雄の方が大きい傾向にはあったのですが、私が調べた河川では、野生魚の方が、顕著な雄と雌の差が見られました。野生の自然産卵の場合は競争が働くのですが、ふ化場の中では、比較的ランダムに子孫を残すことができる、すなわち、人工ふ化の場合は、無作為という作為が働いていることが原因ではないかと考えています。我々人間は、サケ本来の生き様のDNAを絶やしてはならないと思います。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

北米では、サケ本来の生き様のDNAを守るため、放流魚と野生魚のDNAを融和させた資源管理方策が進んでいます。この模式図のように、自然産卵から生まれたサケは、親も自然産卵するかも知れませんし、また、次世代はふ化場の親魚になるかもしれません。一方、ふ化場で生まれたサケも、親もふ化場用の親魚になるかもしれませんし、また、次世代は自然産卵するかもしれません。この融和方策では、この部分、すなわち、自然産卵からふ化場への流れの割合を最大化させ、逆に、ふ化場から自然産卵への流れを最小化することが目標とされます。そうすることによって、野生魚ー放流魚間の遺伝子流動をコントロールし、遺伝的には野生魚に違い状態で放流魚を生産し続け、ふ化事業を行う、ということが掲げられています。北海道でも、なるべく、これに近い形に持っていくことができたら良いのではないかと、私は賛同しています。


さて、野生魚を併用した新しい資源管理を提案したのですが、実は、サケ増殖の歴史を振り返ってみると、昔は野生魚を併用した増殖が行われており、ふ化事業計画には、人工ふ化と天然ふ化の双方が計画されていました。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

これは、戦前のサケふ化事業計画書で、人工ふ化で3億1500万尾、天然ふ化で1億6500万尾の稚魚を生産する計画となっています。

また、右側の摘要に書かれていることがとても興味深いのですが、卵数に対する稚魚放流率が90%、卵数に対する稚魚ふ化率が20%となっており、先ほど、最近の研究で推定された値と、まったく同一の値が戦前にも計画されていました。また、稚魚数に対する漁獲率1%というのは、現在は回帰率と呼ばれているものに該当しますが、若干低めに想定されていたようです。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

こちらは、昭和33年度のさけます増殖事業計画ですが、この中にも、二番目の項目に、増殖方法は人工ふ化と天然繁殖を併用することとし、河川の性状によって次のように分類する、A人工ふ化河川、B天然ふ化河川、C併用河川と記されています。人工ふ化のために47万5400尾のサケを捕獲し、4万9600尾が密漁等被害数、天然繁殖見込みは2万4950尾と計画されていました。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

では、いつ、増殖事業から天然繁殖は消えてしまったのか? 水産庁北海道さけますふ化場が年度毎に策定するさけます増殖事業計画書をさかのぼって調べてみました。すると、昭和52年までの増殖事業計画には、方針に「さけ・ます資源は従来から積極的な人工ふ化と天然繁殖の保護助長対策との併用によってその維持を図っている」と記されており、「天然繁殖の保護助長」の項目には具体的な対策も述べられていました。例えば、「河川工事、砂利採取および電源開発等により、天然産卵床が近年荒廃傾向にあるので、これを防止するため、北海道開発局、北海道および現地土木関係者等関係機関と密接な連絡をとり、適宜関係庁とも折衝して産卵床の保護につとめる。」と記されていました。これは、まさに、現在SWSPが進めていることと同じではないかと思うほどです。

しかし、昭和53年以降の計画からは、「天然繁殖の保護助長」という文言はなくなり、「放流数の増大」が基本方針となり、現在に至っています。なんとなく、「放流」が「河川開発の免罪符」になってきたかのようにも思えます。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

サケの放流数と漁獲数の変化と、増殖計画の方針の変遷を並べてみました。

1880年に茂辺地川で初の大規模放流が始まり、続いて1888年に千歳川でふ化事業が始まる前は、野生魚保護が増殖の手法でした。

その後、昭和52年までは、放流魚と野生魚の併用した増殖が方針とされてきましたが、1978年以降は、放流魚専従の増殖体制へと変わりました。

漁獲量も放流数も、ちょうどその頃から急激に増加しました。しかし、近年では放流数が10億尾とほぼ安定していますが、昨今ニュースで報道されているように、サケの漁獲量は減り続け、近年の漁獲量は放流数が増え始める頃の水準近くまで減り、問題となっています。


さて、現在注目されている、野生サケを脅かす要因には、どういったものがあるのでしょうか。野生のサケ類が減少する要因として、欧米では4つのHがあると指摘されています。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

一つ目は、Habitat、生息環境のH、二つ目はHarvest,漁業のH、三つ目はHydropower、ダム建設や利水のH、そして、4つ目が、Hatchery、ふ化放流のHです。ふ化放流は、元来、魚を増やそうという善意で人が実施した行為であるため、その資源を脅かす要因として挙げられることに違和感を覚える人は、かなり多いです。

生息環境が悪くなると、野生のサケは棲めなくなるというのは、直観的にも理解しやすいものだと思います。例えば、水が汚れていると、当然、サケは住めません。これは、日本のいくつかの河川のBODの変遷をしめしたものですが、私たちが子供の頃、川の水はほんとうに汚かったと思います。しかし、現在は、汚水処理技術が発達し、川の水は、ずいぶんときれいになりました。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

次に、漁業ですが、現在、北海道のサケは、川に遡上する前に、大部分が沿岸域で定置網によって漁獲されます。

このデータは、推定するのは実はなかなか複雑な方法に基づいているのですが、それぞれの川の集団ごとに、定置網による沿岸漁獲率を推定したもので、平均は86%でした。8割から9割が漁獲されるというのは、かなり高い漁獲率で、自然産卵で野生のサケが存続するのは、なかなか容易なことではないということは、想像に難くないと思います。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

次にダムですが、このようなダムがあると、当然、サケは上れません。しかし、ダムによる河川の分断化については、年々、改善が進んでいます。

例えば、既存のダムに魚道を作る、スリットを入れる、提体を下げる、といった試みが北海道の各地で行われるようになりました。その効果は、特にサクラマスの資源回復に、大きく貢献していると思います。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

森田健太郎さん「サケ野生魚について」

次に、野生魚を脅かす要因としてのふ化放流になりますが、人工の環境に適応するように、家魚化が生じ、遺伝的な変化が生じることが懸念されています。この家魚化という言葉は、家畜化 の魚バージョンに対応する用語です。また、大量に放流魚が放たれると、そこに住む野生魚との生態的な競合が生じることも懸念されています。

また、ふ化事業を行うための河川での捕獲事業も、自然産卵する野生魚にとっては、大きな障壁となります。

ここで、十勝川の千代田堰堤の例を少し紹介したいと思います。

千代田堰堤は、1935年に作られた取水用堰堤で、これによって、十勝川では魚類の遡上が困難になりました。

しかし、2007年に千代田新水路が作られ、魚類の遡上は物理的には可能な状況と、改善されました。

卜部さんらの研究によりますと「十勝川はサケの産卵域までの遡上環境は比較的良好な状態で維持されており、産卵に適した河床礫も広く分布している。十勝川水系内における自然再生産ポテンシャルは高い」ことが示されています。

しかし、新水路の魚道は年間を通して通水されているが、ふ化事業のサケ捕獲期間である9月から11月にかけては、魚道の出口に柵が設置され、サケが遡上するのはまだ難しい状況が続いています。

十勝川魚道のサケ遡上状況は、複数のブログなどで写真が紹介されています。「十勝川 サケ 魚道 柵」で検索すると、例えば、鱒やさんのブログなどで、リポートがなされていますので、参考になるかと思います。

森田健太郎さん「サケ野生魚について」


森田健太郎さん「サケ野生魚について」

過去から現在にわたり、野生サケを脅かしている要因を見てみますと、水質汚染については、かなり改善されてきたと言えます。ダムについては、まだ部分的ではありますが、かなり改善傾向にあると思います。その一方で、人間によるサケの捕獲圧の方は、あまり変化なし、の状況にあるように思います。

最後に、アイヌ民族のサケ漁のためになるような、議論ができればと思い、いくつか論題を挙げてみたいと思います。

まず一つ目として、自然産卵する野生サケを尊重しながら、サケ資源を利用する方法はアイヌの人々の精神に合致するのかなあと個人的には考えていたのですが、この点はそうなのかどうか、ご意見を伺ってみたいです。

次に、アイヌの方々のサケの捕獲が、儀式用だけではなく、食料や商用にもなる場合は、やはり、数量的に多くなってくると、資源管理が必要になってくると思います。

資源管理といっても、簡単にできることもあります。例えば、産卵親魚数の獲り残し一定方策や、目標となる産卵密度を定めて、それを維持するように捕獲を制限するなどのやり方が考えられます。

そして、持続可能な資源管理を行い、和人が取得できなかったエコラベル(MSCなど)を取得すれば、環境保全に配慮していることをアピールできるし、もし、販売する場合にはブランド化にも繋がるかも。と思います。

最後の4つ目はちょっと別の話になってくるのですが、河川でサケの商業漁獲を行うことは和人の法的に難しいが、その一方で、ふ化事業のために河川捕獲されたサケの余剰分を和人が売却していることとの違いは何なのか? これは、水産資源保護法上の問題はないの?とかちょっと気になっているのですが、この機会に法律の専門家の意見も伺うことができると嬉しく思います。

最後に、もっと野生サケの話を知りたいと思ってくださった方、インターネットからダウンロードできるサケ野生魚の資料について、いくつか紹介させて頂きます。


森田健太郎. 2020. サケを食べながら守り続けるために. 日本水産学会誌, 86(3)

森田健太郎, 大熊一正. 2015. サケ:ふ化事業の陰で生き長らえてきた野生魚の存在とその保全. 魚類学雑誌, 62(2): 189-195.

Morita, K. 2014. Japanese wild salmon research: toward a reconciliation between hatchery and wild salmon. NPAFC Newsletter, 35: 4-14.

学術情報特集. 2019. 北日本の環境アイコン「サケ」の保全活動を考える. 日本生態学会誌, 69(3): 197-237.