エゾシカは森の幸 人・森・シカの共生

エゾシカは森の幸

大泰司紀之+平田剛士・著、
近藤誠司・監修
2011年、北海道新聞社
1500円+税

エゾシカの持つ魅力的な価値を紹介することで、負のイメージで語られがちなエゾシカに興味を持ってもらい、エゾシカに対する価値観を少しでも変えたいという著者らの願いが感じられる。――増田泰・公益財団法人知床財団『哺乳類科学』51巻1号(2011年6月30日発行)


地域社会とエゾシカが共生を図るために必要な考え方、その答えがタイトルにもなった。
――『faura』 2011 spring No. 31


飼料で育てられた動物の肉よりも格段に自然にやさしい「持続的な森の幸」として活用できるとの提言には目を見開かせられる。――BOOKSほっかいどう(『朝日新聞』道内版2011年4月1日付け)


これからのエゾシカと人間の良好な関係をたいへんわかりやすく解説・提唱している。
――『釣道楽』 Issue. 12


「食べることは、まもること」という新たな視点の提示が何よりも興味深い。
――中舘寛隆氏(北海道新聞2011年3月27日付け)


 エゾシカってどんな動物?――こんな問いに、あなたならどうお答えになりますか。……きっと、一人ずつさまざまな印象が語られることでしょう。
 それはエゾシカが、現在の北海道でわれわれ人間の社会に最も身近な野生動物だからです。人によって多様なイメージが描かれ、いろいろな意見が生まれるのも当然です。
 そんな多面的なエゾシカの実像を浮かび上がらせようと、長くシカ類の研究を続けてきた大泰司と、取材記者の平田が、大勢の専門家たちの力を借りてまとめたのが本書です。「エゾシカってどんな動物?」という問いかけに対するわれわれなりの回答――「エゾシカは森の幸である」――を、そのまま本書のタイトルにしました。(「あとがき」から)

【もくじ】

はじめに(近藤誠司・社団法人エゾシカ協会会長)

第1章 21世紀エゾシカ事情
野生ジカ、191万都市に現る!/歯止めなき植生破壊/シカが増えると事故も増える/農地「食害」再び悪化へ/コラム 動物園でエゾシカを学ぶ

第2章 ヒトとエゾシカの長〜い共生史
縄文ニュース・「シカ35頭を一網打尽に」/ともに「北海道」島へ/先史時代のシカと人類/「日本人は狩猟民族じゃない」は本当か/オオカミを滅ぼしたヒトの責任/アイヌ民族の巧みなエゾシカ利用/幕末期の記録にみるエゾシカ/シカ受難の「明治開拓」/昭和時代の食害激化/コラム ニュースなシカたち

第3章 科学で解明! エゾシカのエコロジー
トラベラーたち/「食べられ役」の多産戦略/ハレムに君臨するのは?/なぜ「鹿の子」模様に?/シカに年齢を聞く方法/草だけ食べて3歳で100キロ/体の仕組み/コラム 正しいシカの数え方

第4章 ディア・ハンターという生き方
究極のアウトドアスポーツ/ハンターになるのにいくらかかる?/クリーンキル/狩猟は野生動物を滅ぼすか/コラム ハンター減少と銃規制

第5章 生物多様性を守るための新技術
知床岬の希少植物を守る/「鹿垣」だけでは防ぎきれない/カリングって何ですか?/狩猟と駆除って、何が違うの?/シャープシューティング/「ワナ捕獲」と「一時養鹿」/コラム ハンター養成講座

第6章 エゾシカをいただきます!
ジビエとしてブレイク中!/ヘルシー&ワイルド!/よい食材の選び方/シカ革の魅力とは/シカは漢方薬原料の宝庫/コラム 1300年前のシカ革は柔らかだった

第7章 エゾシカとの共生新時代へ
エゾシカって、害獣ですか/「すみわけ」は可能なの?/電気柵のじょうずな使い方/クルマの前にシカが飛び出してきたら/「捕獲数年9万」が示すこと/サスティナブルな食資源/北海道ブランドの真打ち/地域を活気づける新ビジネス/食べることは、まもること/コラム エゾシカECOツアーin札幌

データベース
エゾシカ肉推奨制度/おいしいエゾシカ料理/エゾシカ肉加工食品/ディアハンターへの道のり/もっと勉強したい人のためのガイド  /エゾシカ・ブックガイド/統計資料/社団法人エゾシカ協会活動年表

あとがき
索引
参考文献一覧